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科学研究費若手B研究プロジェクト(H21-H22)
中国歴史教育に関する実証的研究
―1949年以降の教科書の歴史観・外国観を徹底分析
研究代表者:王雪萍
 

 2005年春、中国各地で「反日」デモが発生した。この時中国における反日感情の高まりの主要な原因の一つに、日本においては1990年代中国政府が打ち出した教育方針としての「愛国主義教育」の強化、とくに江沢民が要求した小中学生に対して近現代史及び国情教育を強化する方針の影響が指摘された。

 研究代表者は以前の研究を通じて、江沢民が近現代史と国情教育の強化を提起した1991年以降に編集した中国の中学と高校の歴史教科書の対日記述と近代日中戦争の部分の字数が著しく増加したことを明らかにした。それは、1990年代の中学の歴史教科書の総字数はそれ以前の倍ぐらい増加したことによって、対日記述の総字数も増加した結果である。しかし、1960年以降対日記述と近代日中戦争の部分の総字数における割合が、一貫して下がってきたことがわかった。ゆえに、1990年以降の愛国主義教育強化の目的は「反日教育」ではなく、祖国と共産党を愛し、社会主義現代化建設のために献身する気持ちを育てるための教育であることを証明した 。

 それでは、建国後の中国の歴史教育に大きな影響を与えてきた要素は、何であろうか。その要素の変化によって、中国の歴史教育の教育方針はどのように変化してきたのか。歴史教育の方針の変化に伴って、日本を含めた外国関連記述にどのような変化が見られたのか。その変化によって、中国人の外国観に影響を与えたのであろうか。

 本研究の目的は、一般人民向けの愛国主義普及キャンペーンではなく、建国後、一貫して実施してきた愛国主義教育が歴史の授業の中でどのように実践されてきたかを明らかにすることにある。そのためには、中国政府が児童や生徒たちに伝えたいのはどのような歴史観、外国観であるのかを分析する必要がある。すなわち、その歴史観は時代によって、政治状態の変化によって、国際関係の変化によって変化してきたものか、変化したとしたらどのように変化したのか、そして、一貫して変わらないものはどのようなものなのかを分析する必要があると思われる。


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